ペインスクリークキリングスに残る謎 第一弾
ペインスクリークキリングスはクリアをしたあともいくつかの疑問が残る箇所がある。
そして、その疑問について、なぜか考えてしまう僕がいる。
多分、それはこのゲームが「人との会話」からではない「日記」という手段でしか情報を得られないゲームだからなのだろう。
物語の結末以外には不確定なものが多く、それが僕の好奇心につながっているのかもしれない。
今回から複数記事に分けて、このゲームに残る疑問について妖怪なりに仮説を立ててみようと思う。
本当は1記事にまとめようと思ったが、これまた疑問が増えすぎて、まとめきれないので小出しにした方がやりやすいと判断した。
ここからはネタバレ全開でゲームをプレイした人しかわからないことだらけなので、ゲームをプレイしてから見て欲しい。
仮説というにはおこがましい内容なので、妄想に近いのだが、ゲームをプレイした人ならちょっとだけドギマギする内容になってるはずだ。
今回の仮説は「ゲームの進行上、そうするしかなかったから」というような製作側のメタ的な要素は全て排除して、ただ単純に疑問に思う箇所を妖怪なりに真剣に考えている。
そして、妄想乙と言われないように、できるだけ、ゲーム中から集めることのできる情報から仮説を立ててみた。
情報は日記がメインになるが、日記の情報については別記事でまとめているのでそちらを参考にして欲しい。
この妄想を見ていただき、再度ゲームをプレイして、さらなる発見と妄想に浸ってみてほしい。
参考記事:ペインスクリークキリングスの時系列【攻略メモ】
探偵スティーブン・モスという男
本作は住人が退去し、廃墟化してしまった小さな町、ペインスクリークをジャーナリストである主人公が過去に町で起きた未解決事件を探ることがメインの目的となっている。
そして、事件が起こった1995年と主人公が調査する1999年との間で、とある私立探偵がペインスクリークを調査している。
彼の名前はスティーブン・モス。
プレイヤーは町にある日誌や資料から事件の考察を進めていくうえで、数年前に同じように事件を調査していた彼の軌跡もたどることとなる。ドラクエ3のオルテガしかり、人間というものはなぜか過去の軌跡を辿ることにワクワクするものである。それは妖怪も同じ。
ヴィヴィアン・ロバーツ事件から2年後の1997年、屋敷に残る最後の善人によって事件の調査の依頼が私立探偵に舞い込んだ。
ニューヨークにある探偵協会に所属する男は黒い車でペインスクリークにやってきた。
身長177.8cm。体重86キロとなかなかの体格で、1947年6月3日生まれ。ペインスクリークに調査にきたときは、50歳のころと思われる。
顔を見る限り、屈強そうな探偵という感じがし、「コイツ一人で事件解決できるだろ」という感じがする。
実際にゲームをプレイしているとスティーブン・モス探偵の情報が大いに役立つ場面が多い。というか、彼の情報なしにこのゲームはクリアできない。
ただいいところまでは行っても、真犯人に躍らされたり、いまいち有能なのかわからない人物である。
しかし、どこか魅力も感じる人物。
実際に本作のエンディングの最後には「Special Thanks」として彼の名前が連なっていることからも開発スタッフの愛情も背負っているみたいだ。(ちなみにモデルがいるのかと思い、彼の名前で調べたが出てくるのはどこかの社長だけだった)
今回はそんな魅力に満ちたおじさん、スティーブン・モス探偵について迫ってみたい。
仮説新米探偵スティーブンモスの苦悩
さて、僕がいまいちモス探偵が有能かどうか微妙と言ったのには理由がある。
彼が町にやってきた1997年はまだペインスクリークは廃墟化しておらず、事件の関係者たちも少なからずだが、町にいた。
彼は当事者たちから話を聞くことができ、保安官というオフィシャルのバックアップ付き。さらには事件を知る依頼者からのサポートも付いている。
なのに、依頼者を信じ切ってドジを踏んだり、誰に隠すこともなく大っぴらに捜査をしてたり、とベテラン探偵というには初歩的なミスが多い気がするのだ。
バックアップが一切ない単なる新米ジャーナリストの主人公の方が探偵よりもすごいなんてどうもいただけない。(まあ、モス探偵の日記などが大いに役立ったのだが)
主人公の探索能力と日記をそのままにした街の人々のおかげといったらそれまでになるが、どうにもスティーブンの扱いがなんかかわいそうだ。
たんに制作側も攻略の上でのヒント要員として彼を用意しただけなんだろうか??
しかし、彼の探偵IDカードをよく見てみると面白いことがわかってきた。
上の画像を見ていただきたい。
探偵IDの左下に記載されている「ISSUED」の年月日。
探偵協会から私立探偵として登録されたのが1996年1月15日と書かれている。
彼が依頼を受けてペインスクリークにやってきたのが1997年3月13日〜20日と考えると、モス探偵は探偵協会に登録されて1年ほどで依頼を受けていることがわかる。
つまり、彼は割と新米の探偵だったのだ!!
(え、あんなジジイなのに!!)
もちろん、ただライセンスの更新が1996年でそれまでもずっと探偵をやっていた可能性がある。
いやちょっとまて。もう少し、IDカードを見てみよう。
……っおお!!
なにっ!!「CLASS:D」!?
このクラスが何を指しているか詳細には分からないが、ペインスクリーク小学校D組のスティーブンくん、でないことは確かだ。
つまりこれは彼の探偵のランクであることが推察できる。
欧米のランク制が日本と同じかどうかは判別できないが、Dってのはあんまりよろしくないことは妖怪でもわかる。
(ここについて、アメリカの探偵ライセンスのランク制について調べてみたが、ライセンスによってはアルファベットの昇順が逆の場合もあり優劣は判明しなかった。
ただし、アメリカの通常の免許証のDクラスは通常という意味から今回はDランクが優秀なクラスではないノーマルなものと判断している)
以上のことからスティーブン・モス新米探偵説が立てられそうだ。
……いやいや、全国のスティーブン・モスファンの人間の方々。もうちょっとお待ちください。
僕は彼をディスるためだけにこれを書いてるわけでは決してないのです。
元警察官説
じゃあ彼は探偵以前に何をしていたか。
彼の顔と年齢を見るにおそらく、モスは叩き上げの元警官で退職後に探偵としてのキャリアをスタートさせたと考えるとしっくりこないだろうか。だってあの顔とあの目、あれは警官の目だもん(°▽°)
事実、アメリカの探偵はライセンス制となっており、ライセンスを取得するのに実務経験も要求されるため、元警察関係者が多いんだそうだ。
元警官という仮説で考えていくといろんなことがしっくりくる。
まず、保安官のバックアップの存在だ。
モスの日記を読むに、保安官は完全にモスを信用しており、機密ファイル(検死表やアリバイファイル)などを自ら進んで彼に見せている。
普通に考えて、公職である町の保安官が一介の私立探偵にそこまで協力するだろうか??
保安官は匿名の依頼人が誰かを知っていたとして、その依頼人から協力を頼まれたと考えることもできるが公的存在の保安官が一般市民に機密情報まで教えるとは考えにくい。
だが、もしモス探偵が元警察関係者であることを保安官が把握していれば、彼の全面協力も納得がいく。
次にモスの調査・収集能力。
先ほどまで、完全にモスの能力をディスっていたが、それでも彼の聞き込み能力と行動力は新米探偵とは思えないほどにすごい。
聞き込み調査から1975年に起こったことが解決の糸口になることやパトリック孤児院に行き着いたこと、など聞き込みがやけに手慣れている。
チャールズが雇ったベッカーという探偵はソフィアの身元については調査不可能と判断を下していたことを考えても、モス探偵の有能さが際立ってくる。
新米探偵にここまでの能力があるだろうか。
さらに彼の日記には「〜である気がしてしょうがない」「でも何かが足りない。考えすぎか」などと探偵というよりも刑事の感に近い文言が頻出してる。
顔や行動などから元刑事であることが妄想の域から出そうになってきた。
元刑事かベテラン探偵か
ただ、この説を推すには2つの障害がある。
1つは、モス探偵を退職警官にするには50歳と若すぎること。
そしてもう1つは、依頼人が友人のつてでモスに依頼したことである。
年齢に関しては、可能性があるとすれば怪我だ。
勤務中における事故などの怪我で刑事としてのキャリアをリタイヤせずにはいられなかったと考えれば、探偵でのリスタートもありえなくはない。
問題はもう一つの方。
「探偵スティーブン・モスへの依頼の手紙」にはこう書いてある。
友人のつてであなたのことを知りました。彼女がとてもあなたのことを推薦して、なんでも誠実でとても信頼できる方と聞き、ご連絡しました。
この友人のつてをストレートに読むなら、以前からモスが探偵として活動をしていたと読み取ることができる。
しかし、よく見ると、探偵として活動しているといった直接の記述はこの手紙には書かれていない。
ここから、依頼者の友人がモスとプライベートで関わりがあったと考えることもできないだろうか?
むしろ、「誠実でとても信頼できる方」という表現は仕事の縁というよりもプライベートの縁と考える方が妥当だと思われる。
そうなると、依頼者の友人(彼女)はモスと同じ地域であるニューヨークに在住ということになる。
この依頼者の友人(彼女)として候補に上がるのがアンドリュー・リードの元妻であるローラである。彼女たちがニューヨーク在住という記載はゲーム中には出てこないが、ローラが電話などで連絡をとっていたことから遠方の友人として彼女がモスとつながりを持っていたと考えることができる。
アンドリュー・リードは今回の事件の第一の被害者でもあるため、元妻のローラが事件の解決に協力的だったことも考えると、ローラからの紹介も動機はある。
ローラの家の近所に住んでいた警察官のモスが母子家庭である彼女たちを友人としてサポートしていたと考えれば、モスが最近になって探偵になったと考えることができる。
余談だが、この文章中にモスが誠実で信頼できると書いてあるが、有能とは書いていないことが興味深い。
元警察故の誤算
以上のことからここではスティーブン・モスは元刑事のキャリアの浅い新米探偵として扱っていくこととする。
さて、ここまで書いて、なんでモスをそこまで新米探偵にしたいのか、自分でもよくわからなくなってきた。
ああ、そうだ。彼はベテラン探偵にしてはお茶目なミスをしてるからだった。
そう、僕はスティーブン・モスを擁護したくてしょうがなくて彼を新米探偵に仕立て上げたのだった。
では、ここからモス探偵がなぜ、真相に辿り着けなかったのか、その敗因について妄想していこう。
そのためにも新米探偵説を書く必要があったのだ。
まず、モス探偵の大きなミスの1つが、上でも書いた通り、依頼人を信じすぎたことがある。
この依頼人からの手紙や指示を自身の推理の大きなポイントとして利用したことによって、彼は間違った犯人を一時追うことになってしまう。
結果的にはそれを自ら訂正し、タイプライターの文字の違和感に気づいた能力はさすがというべきであろう。
ただこのミスは彼の最大のミスにはなっていない。
彼の最大の敗因は、目立ちすぎたことにある。
匿名の依頼人から殺人事件の依頼を受けたモス探偵は、まず、愛車マーヴェリックで町の中心地にあるアンズコートイン&スイートに部屋をとることにする。
その際、彼はなんと、車を町の中心にこれみよがしと駐車し、宿帳に馬鹿正直に本名まで書いているのである!
さらには、宿屋の主人に私立探偵であることを言い、その後も町の人々に大々的に聞き込み調査を行っている。
いくら、数年前に起きた未解決事件だからといって、素人目にもベテラン探偵の所業とは思えない。
僕がもし探偵なら、少なくとも探偵であることは隠すし、聞き込みももっとひっそりと行うだろう。
ここら辺にスティーブン・モスの新米探偵感が出てくる。
その後もモス探偵は保安官からのバックアップを受けながら、大々的に捜査を行っていく。
まるで多くの部下がいる刑事のように。
そして、その行動が彼の命取りになった。
まさか自分に危害が及ぶとは全く思っていなかったのだろう。
真犯人が彼を消し去ろうと動き始めたのだ。
スティーブン・モスの最後の軌跡
元刑事ゆえの実直な聞き込みや資料の読解力。そして実地調査と勘。
探偵としてはまだ経験は浅いものの、元刑事だからこそ彼はペインスクリーク事件において有能な探偵となった。
事実、プレイヤーはモスの日記からいくつものパスコードを把握し、彼が怪しいと思った写真から次の道を開くことができた。彼の調査がなかったら、事件は迷宮入りしていたことは間違いないのである。
しかし、探偵としてのキャリアが浅かったがために刑事としての油断と怠慢が自らの首を絞めることとなった。
ゲームをプレイしたプレイヤーなら察しがつくと思うが、以下の点からスティーブン・モスは真犯人によってすでに殺されている可能性が高い。
- 201号室のドアの下に賃貸の支払書(彼が家に帰っていないことがわかる)
- 車のダッシュボードの血
- 車のパンク
- 個人用ロッカーにある、追われている記述
そして、彼の所持品が見つかる場所は2つ。
屋敷の2階のヴィヴィアンの寝室(201号室の鍵)と病院地下室の死体安置所(免許証や日記)だ。
このうち、多くの所持品が散らばっている病院地下室が彼の最期の場所と考えるのが妥当だろう。
つまり、彼の死体は死体安置所のいずれかに入れられている可能性が高い。
では、彼の最期を死体安置所とした場合、どのように最期の軌跡を辿ったのか妄想していこう。
モス探偵は5月23日、タイプライターの違和感を発見したものの、教会の隠し部屋の仕掛けを解くことができず、屋敷へ赴く。
そして、ヴィヴィアンの寝室で後ろから犯人に襲われる。手傷を負い、201号室の鍵を落とす。
その際、置いてあったベッドライトで反撃し、真犯人の落とした教会隠し部屋の鍵を取り、屋敷から逃げ出す。
道路の側溝に教会隠し部屋の鍵を隠し、宿屋まで逃げ、自分用のロッカーにメモを残す。
そして、その鍵をすでにパンクしている車のダッシュボードに隠してロックする。
(ダッシュボードの鍵は道中で落としたか、どこかに投げたことにより、保安官室の落とし物として保管される)
隠れる場所を探すも、自室の鍵は落としたことに気付き、どこに逃げるか考える。
このまま町の外に自力で逃げるには、手傷を負いすぎており、さらに前職の古傷で全力で走ることもできない。そして頭がガンガン痛む。
とにかく、隠れることができそうな場所として、残る大きな建物である病院へと急ぐ。
地下へ逃げ込み、鍵をかけて一安心するものの、地下道を自在に動くことができる犯人に先回りされ、死体安置所で追い詰められる。
……といった感じだろうか。
この行動で考えると、またいろいろな疑問が湧き上がってくる。
モス探偵は死後も僕の頭を動かしてくれる。
「まさに死せるモス、生ける妖怪を走らす」だ。
スティーブン・モス失踪事の謎
僕の妄想モスの最期が正しいとすれば、おかしな点がいくつも出てくる。
それが以下の点だ。
- なぜモスはヴィヴィアンの寝室にいったのか
- なぜ宿屋の人々に助けを求めなかったのか
- なぜ保安官に助けを求めなかったのか
これらの点を考える前にまず、モスが調査にやってきた1997年3月20日から消息を経つ最期の日記の記述5月21日までの2ヶ月間にどれくらいの人々が町にいたのかを考えてみたい。
1997年のペインスクリークの過疎率
1997年のペインスクリークは、前年にペインスクリーク病院が閉院したことからもわかる通り、急激な過疎化が進んでいる。
すでに、80年代初めには若者が町に戻らず、高齢者ばかりが増え、人口も減少し始めていた(ペインスクリーク新聞)ようで、1995年の3つの事件があったこともあり、町はゴーストタウン化していたことがわかる。
主要人物もヴィヴィアン/トリシャ/スコット/アンドリュー/ヘンリーなどが死に、96年にワンダも病死し、チャールズ/デリック/ドロシー/オリバーも街を離れている。
つまり、1997年のペインスクリークには数件の家しか住民はおらず、店も宿屋とカフェしか空いていないということが推測できる。
この記事を書いた当初はもっと人がいると思い込んでいたが、調べていくうちにかなりのゴーストタウンだったことが判明し、モス探偵の有能さが際立ってきた。
つまり、モス探偵が調査をしていた2ヶ月間の間、街にいた主要人物はジェームス保安官/メアリー(カフェ)/宿屋の主人/マシューということになる。
これらを鑑みて、疑問点を見ていこう。
なぜモスはヴィヴィアンの部屋にいったのか
まずはここである。
僕の妄想でいくと、モス探偵はヴィヴィアンの部屋で犯人に襲われている。
モスはなぜすでに調査が済んでいるであろうヴィヴィアンの部屋にいったのだろうか?
そもそも行っていない可能性もあるが、それならモスの部屋のキーが床に落ちているのと、わざわざベッドライトが荒らされた形跡を表現する意味がわからない。
落としたキーは自分の部屋のキーなので、犯人に襲われるもっと以前に落とした可能性は考えにくい。
ヴィヴィアンの部屋で荒らされた形跡の他に気になる点が1つだけある……
それが、暖炉だ。
ヴィヴィアンの部屋には暖炉がある。そして主人公が調査にいくときはその暖炉が閉まっている。
モスはこの暖炉の中を見に行ったのではないだろうか?
この暖炉には何があるのか?
僕はこの暖炉の中にとある人物の死体があるのではないかと思っている。
そう。屋敷の執事バーナードだ。
バーナードはどこにいった?
バーナードは真犯人と同じ左利きで、ヴィヴィアン事件の当日、アリバイのない人物である。
そのため、真犯人は彼を犯人に仕立て上げ、モス探偵の捜査を惑わせた。
彼がシリアスな人物で身寄りがないことも好条件だったのだろう。
実は真犯人はプレイヤーにもバーナードを犯人として疑うように仕向けている
プレイヤーに見つかるようにわざと屋敷の2階のジムロッカーに彼の家の鍵を入れていたり、その他いろいろな工作を行っている。実際、初回プレイ時、僕も彼を疑っていた。
とはいえ、バーナードも犯人であることに変わりはない。
バーナードの家の2階の床には血がこびりついている箇所がある。ここを釘抜きで開けると中から血塗られたナイフが見つかる。
本編のクリアとは関係ないが、ここからバーナードがスコット・ブルックスの殺害犯であることが推測できる。
真犯人からすれば、スコットの殺害は予期していない出来事だったのだろう。
生きていてくれれば、自分に変わってヴィヴィアン事件の犯人として身代わりになってくれるかもしれないが、自分の息子を殺されたことで彼はバーナードを消すことにした。
といってもバーナードは元軍人で体格的には真犯人には分が悪い。
だが、バーナードの日記を見る限り、すでにバーナードは体調を崩し、抗鬱剤など薬の副作用で参っており、弱っていたことがわかる。
真犯人は屋敷の人とも長い付き合いである。彼はバーナードをすぐに殺すのではなく、面倒を見るという体で生かしたまま手元に置いておいたのではないだろうか。
常に手元に置いておき、捜査が進めば彼を犯人として隠れ蓑にすることができるし、不要になればいつでも消すことができる。
モス探偵にバーナードが犯人でないと見破られたとき、彼は用済みになった。またはモス探偵が来る前にすでに殺されていた。
彼は愛するヴィヴィアンの部屋に連れていかれ、殺された。
当初は真犯人に誘導され、バーナードを疑っていたモス探偵だったが、1997年4月30日から5月19日までの間で、
なんてことだ。彼だと思っていたのに。間違っていた!
彼は犯人じゃない。彼じゃない!
こう書いている。
この「彼は犯人じゃない。彼じゃない!」の言い方がちょっと気になる。
こんなに繰り返して言うということは、バーナードが犯人ではないという確信があるから、だろう。
バーナードに実際に会って話を聞いているわけでもないモス探偵が彼を容疑者から完全に外す理由は何か?
それは彼がすでに死んでいることに気づいたからではないだろうか。
そして、バーナードの行方について、何かしらの手がかりを掴んだモス探偵は屋敷の探索を再開し、真犯人に襲われた。
……というのが僕の妄想である。
というのも、モス探偵がバーナードの行方をヴィヴィアンの部屋にあるとした痕跡は残念ながらゲーム中からは見つからないからだ。
そのため、バーナードの死体暖炉説はあくまでヴィヴィアンの寝室にある『荒らされた痕跡』や『モス探偵の宿部屋のキーが落ちている』こと、また『バーナードがヴィヴィアンに好意を寄せていた』ことからの推測にすぎない。
でも、それでもなぜ、ヴィヴィアンの部屋にバーナードの死体がある説を推したいかというと、この部屋がちょっと奇妙だからだ。
ヴィヴィアンの部屋の気味悪さ
この部屋は実は『ヴィヴィアンの部屋』という名称ではない。
地図上の正式な部屋の名称は『マスターベッドルーム』。つまり、夫婦のベッドルームなのだ。
ヴィヴィアンの部屋は事実上、2Fにある『ティールーム』であり、ゲームではここで時計の仕掛けなどを解いたり、後半に重要なスポットになっている。
『マスターベッドルーム』はチャールズ夫妻の寝室にあたるわけだが、夫婦仲の冷め切った二人がここで一緒に寝ていたとは考えにくい。
ベッド脇のヴィヴィアン側の棚に日記や化粧道具などが置いてあり、逆側、つまりチャールズの方には何もないことから、おそらく、ヴィヴィアンの専用のベッドルームになっていたのだろう。
そのヴィヴィアンの悲しみ、というか空虚感のようなものをこの部屋からは感じることができる。なんか暗い。
僕がこの部屋で感じた違和感はベッドランプやモス探偵のルームキーが落ちていることだけではない。
ベッドにそっと置いてあるヴィヴィアンのものであろう帽子。
一見なんの変哲もない帽子だが、このゲームは事件の手がかり以外に個人を表すような衣服や人間味のあるものがほぼ出てこない。
だから、この帽子がなんか気持ち悪いのだ。
まるでヴィヴィアンへの想いを寄せる誰かがあとから置いていったような気がしてしまう。
次に暖炉。
この部屋には真ん中に暖炉らしき鉄の扉がある。
開くことのない鉄の扉。このゲームには暖炉が出てくる部屋はここにしかない。
初プレイ時、僕はこの暖炉に何かあるような気がしてならなかった。だからこの部屋をよく覚えていた。
さらに言うと、もう一度、屋敷の地図を見ていただきたい。
地図の北東に『マスターベッドルーム』があるのだが、この部屋には他の部屋へ続くドアが2つある。
1つが『バスルーム』。
地図で名称として残っている場所だが、入ることができないのはなんか意味ありげではある。
そして、このバスルームへのドアは荷物で塞がっていて通ることができないのだが、この塞ぎ方がこれまた怪しい。
屋敷の引越し作業のためにダンボールなどが置いてあるのはわかる。
しかし、『バスルーム』へ続くドアはダンボールだけでなく、その下にわざわざドアを塞ぐように棚が置いてある。
ただの引越し作業のために棚でドアを塞ぐ必要があるだろうか?
もう1つが地図最北東にある廊下がある『謎の部屋』だ。
ここには名称がなく、どんな部屋になっているかがわからず、さらに部屋へ続くドアには鍵がかけられている。
外から周ると、廊下には窓があり、絵やツボが飾られているが、その先の部屋に当たる部分は外壁に覆われてよくわからない。
この廊下の先に何があるというのだろうか。
『暖炉』『バスルーム』『謎の部屋』
これらに接する『マスターベッドルーム』には何かがあるとしか僕は思えない。それだけ不気味な部屋なのだ。
このどこかに誰かの死体が隠されていたとしても不思議ではないだろう。
僕はこの記事を書く上で再度、この『マスターベッドルーム』を調べてみた。
暖炉の床に何かを引きずったような跡はないか。
『謎の部屋』に続くドア付近にバーナードの遺品が落ちていないか。
『バスルーム』に続くドア付近に虫の音などはしないだろうか。
残念ながら、特に痕跡らしいものは発見することができなかった。
ただ、以上のことから僕はバーナードの行方がこの『マスターベッドルーム』にあると判断した。
最後に、屋敷の一番奥にある『ギャラリールーム』。
いくつもの有名絵画が飾られ、チャールズの隠し金庫がある部屋だが、この部屋の奥は先ほどの『謎の部屋』の壁向かいにあたる。
そして、この謎の部屋に向かって飾ってある絵が「最後の晩餐」であることはどんな意味が込められているのか。
なぜ宿屋の人々に助けを求めなかったのか
さて、モス探偵の最期における最大の謎はここにある。
モス探偵は犯人に追われている間、確実に宿屋に寄っている。
宿屋のカウンターにある201号室用の個人ロッカーに証拠を入れて、宿屋の前にある車のダッシュボードにも手がかりを残している。
普通に考えるならば、ここで、宿屋にいる主人や客に助けを求めるはずだ。
では、なぜ彼は助けを求めなかったのか。
ここに関しては1999年の過疎率でも述べたとおり、助けを求める人がいなかった可能性がある。
アンズコートイン&スイートの宿帳に興味深い情報があった。
宿帳に記録されている最後の人物はクランシー・へウィーという人物。
チェックアウトをしたのが3/29でその後にチェックインしている人物がいない。
その下に空き欄があることからこの人物が最後の宿泊客ということになる。
モス探偵がタイプライターの違和感に気づいたのが5/23で、犯人に襲われたのはこの数日の間だと思われる。
つまりは宿屋であるアンズコートイン&スイート自体は営業しているものの、客はモス探偵のみでそれだけ町はゴーストタウンと化していたことがわかる。おそらく、隣のカフェもこの間に閉店しているだろう。
しかし、それでも、モスが追われていたとき、宿屋自体は営業をしていたはずだ。
いや、少なくとも宿屋の主人はいた可能性が高い。なのにモスは助けを求められなかった。
ここから考えられるのが、宿屋の主人が真犯人の協力者説だ。
宿屋の主人の名前
なぜ、宿屋の主人が真犯人の協力者であるか。
ここについては、実際にアンズコートイン&スイートにいってみればわかることがある。
真犯人はこの宿屋の常連客であったことが宿屋の常連客リストをみれば分かる。
それだけではない。
この宿の客室1つ1つには必ずあるものがある。それが聖書だ。
このことから、宿屋の主人が敬虔なクリスチャンであることが推測できる。そうでなければ、わざわざ客室に聖書を置いたりしないはず。某ホテルチェーンの客室に特殊な雑誌が必ずあるのと同じことだ。
友好的かつ信者である宿屋の主人は犯人に協力的だったといえるはずである。
宿屋の主人が真犯人に協力していたふしはいくつかある。
- 手紙の内容など真犯人が知るはずない情報を真犯人が把握していること
- 薬物等による捜査の妨害
- モス探偵襲撃時に宿屋にいなかった(もしくは無視をした)
これらの3つは宿屋の主人がいなければ成し遂げられなかったものといえる。
モス探偵が依頼人から手紙が来ていて、なおかつその情報を信用していたことを真犯人が知っていたことを考えると、モス探偵と比較的会話をする機会が多かった人物が真犯人に教えたとしか考えられない。
そう考えると、モス探偵と毎日顔を合わせる唯一の人物は宿屋の主人になる。
モス探偵が宿屋に宿泊していた時期はすでに他の客はなく、自然とモス探偵の話し相手は宿屋の主人になっていった。
その情報は全て、町の精神の柱である神父にも筒抜けで真犯人はその情報を元に偽の手紙をモス探偵宛てに届けたのだろう。
また、モス探偵の日記に「頭が痛い」という記述があり、これは、何らかの薬物が投与されたと考えられる。
バーナードも同じように頭痛のことを言っていたと考えると、犯人によって毒を盛られた可能性が高い。
毒を盛られたと考えるなら宿での食事に薬物が混入されていた可能性が最も高いだろう。それを可能にするためには宿屋の主人の協力は不可欠である。
また、翌日、モス探偵の車がパンクされ、電話も使えない状態になった。
これは犯人によるものと考えている。
正直、ここからがよくわからない。
その後の5/19から最後の日誌である5/23までの間、モス探偵はまるで一人で町を探索しているかのように日誌を書いている。
というのも、もし、この時点で町に誰かがいるなら、車も使えない、体調も悪い、電話もない、満身創痍な状態なので誰かに助けを求めるのが普通である。
宿屋の主人がもし、車のパンクから電話線の切断までをやっていたとしたら、宿屋には主人がいることになるので、モス探偵の日記に「宿屋の主人に助けを求めた」など、宿屋の主人に関する記述があってもいい。
そう考えると、少なくとも5/19〜5/23までの4日間、宿屋の主人は町の外にいたということになる。
宿屋の主人だけでなく、町はほぼ無人状態だったのかもしれない。もしかしたら、真犯人に何かを頼まれ、町の外へ出て行ったのかも。
「〜かもしれない」ばかりで申し訳ないが、ここら辺はちょっと妖怪自身も合点行かないところである。もしかしたら見落としてる箇所があるのかもしれない。
とにかく、宿屋の主人の協力のおかげで、真犯人は真相に近づいてきたモス探偵を消す環境を得たのである。
さて敬虔なクリスチャンという点では家や部屋に十字架や聖書を置いているドロシーがいる。
ドロシーは宿屋の常連客である写真屋のオリバーとは仲が良いのに、同じく敬虔なクリスチャンである宿屋の主人に関する記述が一切ないことも気になる。
彼女は彼と距離を置いていたのだろうか?
ここから彼が狂信的かつ性格に欠陥がある人物だった可能性も少なからずある。この場合は完全な真犯人の協力者だ。
しかし、僕は彼が犯罪に自ら加担しているとはどうしても思えない。
狂信的な信者であれば、神父に従うことになるだろうが、宿屋の主人は少なくともそういう人物ではなかったように思える。
宿屋の主人を知る資料として、彼の日誌がある。
そこには、「ビビアン殺人事件が解決されないことを悲しむ」記述や「スコットが犯人か疑問である」という記述があり、いたって正常な感覚の持ち主だということが読み取れる。また、モス探偵について特別好意的には見てないものの、そこまで嫌悪しているような感じでもない。
そう考えると、彼は知らず知らずのうちに真犯人の犯罪に加担していたのではないか。
積極的協力か間接的協力か、そのいずれにしても、宿屋の主人の協力なしには真犯人の犯行は完遂しなかったと僕は思っている。
最後に気になる点が1つ。
この宿屋の主人の名前が一切出てこない点だ。
他のモブキャラの多くは名前が出てくるのに、彼だけ名前がない。
人が気にしないことを気にしてしまうのが妖怪のサガ。
この主人の名前が実は意外な人物だったりすると面白いのだが。。。
「十角館の殺人」のような驚愕の叙述トリックがあったらびっくりものである。
なぜハワード保安官に助けを求めなかったのか
宿屋の主人と同じように、ジェームス・ハワード保安官も事件当日、町にいなかったのだろうか?
日本に住んでいる妖怪なので、どうしてもアメリカの保安官生活について詳しくないのだが、彼が駐在所に常駐していたのかどうかは疑わしい。
例えば、モスのメモにある「5/11 10時 駐在所で保安官と会う」のアポイントメントの記述や駐在所にモスからの留守電が入っていることからもハワード保安官は駐在所に数日に一回来る程度だったのではないだろうか。
もちろん、保安官はめんどいから駐在所に来ていなかったわけではなく、モス探偵が来てから、彼のバックアップのために調査資料集めをしていたと考えることができる。
保安官はモス探偵の調査のために検察医に事件の再検査を依頼し、「検察医の未発表の報告書」を5/13に受け取っている。
このことから、ジェームス・ハワード保安官はモス襲撃時も駐在所及び町自体にいなかったと考えるのが妥当だろう。
ゲーム中一番の罪人
実は僕は当初、この保安官が結構怪しいと思っていた。
「事情聴取記録」や「検察医の報告書」など全ての事件の死因や現場状況を最も近い位置で把握することができる身でありながら、冤罪を確立してしまった張本人だからだ。
特に高度な推理をする必要もなく、最も基本的なことであるアリバイ調査さえ、しっかり行っていれば、怪しい人物はわかるはずなのに……
宿屋の主人同様に真犯人の協力者と疑っていたが、彼の場合はただ平凡な人物だったと考えている。
または、町の影の支配者を信用してしまった悪い意味での閉鎖的かつ小さな町の保安官であった、というところだろうか。
スコット逮捕という冤罪を行ってしまったことへの後悔など彼なりに思うところがあったのだろう。
だから、モス探偵が来たときには全面的に彼を支援した。
残念なことはその後、モスの行方を探したり、調査を受け継がなかったことだ。
彼には支援をすることはできても自分自身で捜査をする自信と熱意がすでになかったのだろう。
彼がもう少し有能な人物であれば、スティーブン・モスは生存ルートを辿ることができたし、事件はもっと早期解決できた。
そういう意味ではこのゲーム中で一番の罪人であるのは実は彼なのかもしれない。
自分への戒めのために、ペインスクリークが廃墟と化すのを見届け、彼は1998年5月にグランド地区へ異動した。
銃の在処
スティーブン・モスは襲われる直前、犯人によるなんかしらの薬の投与により、激しい頭痛に襲われていた。
また、僕の推測では、彼は警察時代になんらかの傷を負っており、自由に体が効かなかったのかもしれない。
だから、犯人に襲われても自衛することができなかった。
……いや、待てよ。
なんで、スティーブン・モスは銃を持ってなかったんだ??
アメリカではライセンスさえあれば市民でも銃を携帯することができる。
探偵ライセンスを持つモス探偵なら異なる州でも銃を携帯することができるはずだ。
さらに彼は元警察官。銃を常に携帯しているはず。
なのに彼のスーツケース、車、痕跡、どこを探しても銃が見つからないのだ。
銃を持っていれば、少なくとも犯人にとって脅威なはずなのになぜモス探偵は銃を持っていなかったのか??
探偵なのだから、「コルト・ディテクティブスペシャル」の1つや2つ持っていてもいいはず。。。
考えられる説は以下だ。
- 真犯人に銃をとられた
- 銃をそもそも所持していなかった
- 襲撃の際は銃を所持していなかった
真犯人に銃をとられた説
まず第一に考えられるのは銃を携帯していたが、真犯人に襲われた際に銃を取られたということだ。
一見すると銃があれば犯人を撃退できそうなものだが、襲撃当時、モス探偵は薬を盛られて、頭痛に悩まされていた、ことを考えると、この可能性は考えられなくない。
ただ、1997年当時は人口が激減していたにせよ、まだ街には住人が残っていたわけで、銃の発砲音でもしたら誰かが気づいていたはずである。
完全に予測不可能な一撃を『マスターベッドルーム』で食らったにせよ、反撃をした痕跡があることから、ここで銃を使っていてもいいはず。
そう考えると、少なくともモス探偵は犯人襲撃時に銃を携帯していなかった可能性の方が高いのではないか。
と、なると、銃をそもそも持っていなかったのか?
銃をそもそも所持していなかった説
モス探偵の経済状況を見ると、彼は自分の家賃を払えないほどお金に困窮していたことがわかる。
(宿屋モスの部屋ドア下から見つかる延滞賃料の支払い請求:追加料85ドルを払えないほどお金に困っていた)
となると、銃を購入する金がなかった、もしくは銃を売却してしまった、ということだろうか?浪人が生きるために刀を売るみたいな?
この可能性はちょっと考えにくい。
なぜならアメリカ社会において銃はそれほど高価なものではないからだ。
銃を売るなら、お気に入りのあの車を売った方がよっぽど金になる。
それなら、警察時代のトラウマで銃を撃てなくなったために銃を携帯していなかった、という方が現実的だろう。
しかし、それを補填するような情報がないため、この説は妄想の域を出ない。
襲撃の際は銃を所持していなかった説
モス探偵は銃を常に携帯していたが、ペインスクリークの街の調査の際は銃を携帯できなかった可能性はどうだろうか?
モス探偵にはハワード保安官によるオフィシャルのバックアップがついており、事件の機密書類などを提供される立場にいた。
公としての捜査は終わっていたものの保安官は事件にいくつかの疑問を感じていたからこそ、モス探偵の捜査に協力したのだろう。
しかし、職務上、保安官としては街でこれ以上、なにか事を起こされては困るわけで、モス探偵への協力の代わりに銃の預かりを命じた。
現実的に考えても、この可能性が一番しっくりくる。
いくら元警察官とはいえ、見てくれも怖そうだし、素性もわからない相手。
モス探偵も信用を得るために銃を預けるしかなかったのだろう。
最も恐ろしいのは、モス探偵の銃を保安官が預かるように指摘したのが真犯人だったら……ということだ。
精神的な支柱として街に君臨する真犯人が自分にとって脅威になる銃を排除しようと保安官に告げ口していたら……
そう考えると、事件の解決においてもモス探偵の安否においても、ジェームズ・ハワード保安官の罪はめちゃめちゃ大きいと言えるだろう。
第二の主人公
最初はその能力を疑っていた僕だが、彼について考えれば考えるほどスティーブン・モスという男が有能な探偵であることがわかってきた。
彼(彼の日記)がいなければ、この2年後にペインスクリークを調査した主人公はこの事件は解決できなかっただろう。
とくに、
- セキュリティルームの暗証番号
- ギャラリーの金庫番号
- バーナードのダーツナンバー
- バーナードの住所
- 宿屋の隠し戸棚
- ソフィアのお気に入りの場所
などは、1999年の主人公には知り得なかった情報なので、彼の日記なしにはゲームの攻略は不可能になっている。
また、
- ソフィアの写真
- ロバーツ家の経歴
- バーナードの疑念払拭
- 6人のアリバイ
- 3枚の写真(病院の幽霊/教会の懺悔室/スコットの隠し部屋)
- タイプライターのeの文字
など、彼がメモや写真を残しておいてくれたことが攻略に大いに役立っている。
まさに『ペインスクリーク・キリングス』においてスティーブン・モス探偵は第二の主人公であったといえるだろう。
最後にこのスティーブン・モスという人がどんな男だったのか、について考えていきたい。
モスの肉声
モスという人物を知る手がかりとして、まず出てくるのは物語冒頭に出てくる彼の電話肉声だ。
「もしもし、スティーブンだ。荷物が送られたかどうか確認したかったんだ。
それで、私はいまアンズコートヤードに泊まっている。他に何かもらえる情報があればお願いしたい。
ありがとう、また連絡する。」
声は少し掠れているものの、イケオジボイスではある。英語の挨拶には疎いが、最後にちゃんと「ありがとう」と言っているのは好印象。
ちなみにここで言う『荷物』については、『Package』と言ってるので、保安官が持ってくる『情報』と思われる。
モスの遺留品
モスの性格を表すものとして一番目立つのがアンズコートヤード前に停めている車がある。
車には「MARVARIC」と書かれており、外面を見るにかなり年季の入った車になっている。
車は宿の真前。というより町のど真ん中に停められており、ここら辺にモスの図太い性格が読み取れる。
宿にあるモスの部屋には机にアタッシュケースがあり、横には灰皿が置いてある。
吸い殻は3本しかないが、灰皿の灰の汚れ具合から吸い殻は何度か変えていると思われる。つまりヘビースモーカー。
ずぼらな性格かと思いきや、部屋は整頓されており、あまり使われた形跡がない。
ここら辺はモス失踪後にマスターキーなどを使って掃除された可能性もあるが、モスが捜査のために常に熱心に町の外に出ていた、と考える方が妥当だろう。
日記や手帳が複数に分けられているのはこのゲームの特性上、登場人物みんな同じだが、モスは日記のほかにメモや写真、書類などを車や部屋用金庫など至るところに散りばめている。
彼が自分の命の危険を察知してそうしたのかはわからないが、真犯人に証拠を取られないために証拠を至るところに隠しているクレバーさがモスにはある。
モスのあのいかつい顔は探偵ライセンスと財布から見つかる身分証明書でわかる。
めっちゃ年季の入った財布には身分証明書と何かのポイントカード以外、一切お金が入っていない。
真犯人は曲がりなりにも聖職者であるので、財布から金を盗んだとは思えない。
家賃の未納支払いや、調査依頼に前金の話もあることから、モスはマジでど貧乏だったと考えられる。
財布よりもコートのポケットに小銭をジャラジャラ入れてそうだ。
モスの日記
このゲームは日記を見るゲームでもあるわけだが、登場人物それぞれ字体が異なってるのにお気づきだろうか?
日本語選択をしていると日本語表記が出るために分かりにくいが、こういう細かいところまで設定しているところがこのゲームの良いところでもある。
ぜひ一度、オプションから「言語」を英語にして、日記のそれぞれの字体を見てみよう。
意外な人物が字体が綺麗だったりしてちょっと驚く。
では、モス探偵の日記はどうだろうか。
彼の日記を見るに、字体は決して綺麗であるとはいえず、結構字が細かいことに気づく。A型かな?
とくに「I’ll」や「all」など「ll」が重なるのが彼の字の特徴といえる。「!」マークもなんか可愛い。
字は綺麗ではないが、日記以外のメモにも記載していることから、かなりの筆まめ・メモ魔であることがわかる。ここら辺はさすが探偵といったところか。
また、モス探偵は主人公と同じように常にカメラを携帯していたのだろう、写真も多く残している。
このカメラはモス探偵の荷物からは見つかっておらず、また保安官事務所からも見つかってない。
おそらく真犯人に取られたのだと思うが真犯人のアジトからも見つかっていないので、このカメラの所在が気になるところである。
真犯人がモスの遺留品からこれだけを取っていたと考えると最後の数日で撮影したモスのカメラにはいったい何が写っていたのだろうか。
モスが依頼を受けた理由
モス探偵はなぜ、ペインスクリーク事件の依頼を受けたのだろうか?
依頼人の友人がモスにお世話になった経緯もあるが、まず考えられるのはモスの『経済的』な問題だ。
彼は家の家賃の支払いに困るほど、お金に困っており、探偵としての仕事もうまく行っていなかったと考えられる。
そんな中、自分の住むニューヨークから遠い(と思われる)ペインスクリークという小さな町からやってきた依頼。
前金で報酬ももらえることからモス探偵にとってはありがたい仕事だったはずだ。
そして、依頼の手紙と同封された
お前が何をしたか知っている。
深夜、井戸で会おう。
お前はどこか知っている。
一人で来い。
というメモ。これが彼の好奇心に火をつけたのだろう。
驚くのは彼がペインスクリークにやってきた1997年3月13日から最初の日記にある26日までの10日ほどでスコットとパトリック孤児院の関係性やソフィアの存在に気づいていたことだ。
写真などはドロシーの協力があった可能性もあるが、ここは素直にモス探偵の調査力を褒めるべきだろう。
モス探偵の捜査アプローチ
モス探偵の日記や写真を見る限り、彼はこの事件の全容を知っていたわけではないと僕は考えている。
写真には「スコットの地下室」「教会の懺悔室の倉庫」「教会の隠し部屋」などのヒントがあるがモス自身がこの鍵を開けていないとなると、これらの場所には行けてないことがわかる。
そうなると、モス探偵はスコットの素性については知っていたのだろうか?
宿屋のモスの部屋にあるアタッシュケースには「ヴィンセントの誕生日」というワードがある。
このことから、モス探偵はソフィアにヴィンセントという子供がいたことはわかっていたようである。
ただ、わざわざ『ヴィンセント』というワードを使っているので、もしかしたらスコット=ヴィンセントであることは分かっていなかったのかもしれない。
そう、彼の捜査には人間関係などの動機的な観点からのアプローチが足りないのである。
この事件の人間関係をもっと調査をしていれば、誰が真犯人であるか早期解決ができただろう。
彼の捜査は日記を見る限り、
- 事件のアリバイ証言
- タイプライターのeの文字
- 金庫や机などのパスワード
- マシューのパズル
などパスワードやアリバイ、調査書など事件の客観的な事実を優先している。
ここら辺が彼が探偵というよりも警察に近い感じがした理由でもある。
また、ここがモス探偵とジャーナリストとしての主人公との決定的な違いになるのかもしれない。
この『動機的な観点からのアプローチの不足』は、とあることとも大きく関係していると思うのだが、これはまた今度別記事で書きたいと思う。
モス探偵の最後のメモ
モス探偵最後の日記は1997年5月19日から23日の日記になる。
時系列的にその後、モス探偵は真犯人による襲撃を受けて、逃げている最中に宿屋に寄り、隠し金庫にメモを残している。
そのメモの内容が以下だ。
奴は今、私を追っている。
隠れなければ。しかし、
あの鍵は道路わきの排水口に隠した。奴もみつけられない
モス探偵がもしお金のためだけに依頼を受けたとするならば、車のパンクなど自分の命の危機を感じる際に逃げ出していただろう。
だが、最後の日記で彼は最後まで事件の真相に迫ろうとしていた。
そして、真犯人に襲われ、逃げている最中にもなお、モス探偵は自分の行動を最後まで誰かに残そうとしている。
そこには彼なりの【探偵としてのポリシー】【正義感】というものがあったのだろう。
宿屋の主人の日記には唯一、モス探偵が登場する。
今日モスさんが来た。私に何か彼がまだ知らないことがあるかを聞きたくて来たようだ。
法的にも私が言えることは全て話した。彼の調査がどうか聞いてみると、1975年に起こったことが事件の解決の糸口になるかもしれないと言っていた。
普通、閉鎖的である小さな町に外部からよくわからん探偵などが来たら、悪態の一つでもつきそうなものだが、宿屋の主人はモス探偵のことを「Mr.Moss」と呼び、彼の捜査にしっかり協力している。
そう考えると、スティーブン・モスは気さくで誠実な性格の良い男だったのかもしれない。
まとめ:スティーブン・モスよ永遠に……
今回は「ペインスクリークキリングス」の謎第一弾としてスティーブン・モス探偵について妄想考察してみました。
いや、多分、スティーブン・モスについてここまで考えているのも全世界に僕か開発者の方のみでしょう。
今回の考察をまとめてみると、
- スティーブン・モスは元警察官の新米探偵であった
- モス探偵はペインスクリーク病院地下で殺された
- モス探偵は屋敷のベッドルームにバーナードを探しに来た
- モス探偵襲撃には宿屋の主人の協力が不可欠だった
- スティーブン・モスの功績を台無しにした張本人は保安官
- スティーブン・モスは有能な探偵だった
という感じになります。
まあ、ちょっと妄想がすぎてる気もしますが、妖怪なりに疑問から根拠を見つけて推論しているつもりです。
結論としてモス探偵は当初思っていた以上に有能な人物であることがわかりました。
まさにエンディングに『Special Thanks』として名を残す価値のある人物だったわけです。
僕が「ペインスクリーク・キリングス」をプレイしてまず疑問に思ったのが、このスティーブン・モスの消息でした。
彼についてゲームをやり直し、いろいろな日記や資料を読んでまとめてみると、さらに新たな疑問が出てきてこの記事を書くことになったわけです。
まだまだ、決してプレイ時間が長いとはいえないこのゲームについての謎はあります。
次回は第二弾としてまた書いていくつもりです。
もし、興味があれば、ゲームをやり直して、今回の妄想考察について新たな気づきや考察があれば、コメントやメールで教えてくれると嬉しいです。
探偵スティーブン・モスは自分の命の危機に際しても最後まで事件の解決のために戦った誠実な男として「ペインスクリーク・キリングス」をプレイするプレイヤーの心に残り続けるでしょう。