荒鷹はオカルトが好きだ。
なぜ、好きなのかについてはよくわからない。
でも自分にはまったくといっていいほどいわゆる霊感がない。これでも妖怪なのに……
だからこそ、怪談や都市伝説などの不思議なことに興味全開なのかもしれない。
実際に自分にそういう類のものが見えてしまったら、怖くて嫌いになっていただろう。
でも、荒鷹も地球にやってきて、それなりに変な体験をしている。
科学という迷信でこの地球という大地が自分たちのものだ、と豪語している人間たちに警鐘をならすのも妖怪たる私の役目でもある。
なので、今日から私が体験した話や聞いた話を健忘録として綴っていきたいと思う。
今日は「駅のホームの話」
向こうのホームは異次元への扉
僕がとある用事で某大型駅のホームで電車を待っていた時の話。
残暑がのこりつつも涼しい風が心地よい秋の初旬。時刻は確か13時くらいだったと思う。
元来、時間にルーズな僕は今回も遅刻の理由をあらかじめ考えながら来たる急行電車の到着を待っていた。
乗るべき急行列車をギリギリのところで逃してしまい、次にやってくるのは10分後。
それでも都会の電車は分刻みでやってくるし、ダイヤ通りにやってくる。逃してしまったことに腹立たしくも感じながら、ありがたみも感じていた。
たくさんの車線が通る大型駅だから、10番線以上のホームが通っている。
自分がミルフィーユの中のクリームの1粒子になってしまった気分を感じながら、僕は同じホームに並んでいるサラリーマンやお姉さんのみんながみんなスマホを見てる風景を興味深く眺めていた。……がすぐに飽きた。つまらぬ。
向かい側のホームでは、自分のよく慣れ親しんでいる地元の線路が流れている。
可愛い娘いないかぁーと思っていると、自分の真正面にベビーカーを引いている家族連れに気づいた。
家族連れといっても、ベビーカーを引いたママにまだ3歳くらいの男の子にその妹らしき女の子、そしておばあちゃんだ。パパはいない。
休日の昼間なので、親子三代で買い物をしていたのだろう。別段、おかしなことは何もない。
ただ、なぜかその家族に注目していた。というより、子供たちがとっても可愛らしかったから見ていたんだと思う。
お兄ちゃんの方はママと手をつなぎながら、おとなしく電車を待っていて、早く電車の到着を待っているようだった。
それとは逆に妹ははしゃいでて、家族の周りをぐるぐる走り回っている。おかっぱ頭で遠目で見ていても可愛らしい女の子だった。
二人の子供は同じくらいの背格好だったのだが、その様子を見て、お兄ちゃんと妹と勝手に想像していたのだった。
ママは自分の母親であろうおばあちゃんと話し込んでいた。今時の核家族のようにおばあちゃんといっても60はいっていないだろう。
そんな二人にあやしてもらいたいのか、妹の方がぐるぐる茶々を入れている。でも、そんなことおかまいなしに二人は話し込んでいる。
そこで違和感を感じた。
よくある風景なのだが、あまりに家族がこの女の子に無関心なのだ。
僕はベビーカーを見た。そのベビーカーには明らかに男の子用のキャラクターの前掛けがかけられている。そこから僕はこのベビーカーはお兄ちゃん用のものと判断した。
じゃあ、この女の子は誰なんだ??
そう思った。
そんな疑問を思い浮かべていると、向こうのホームに電車がやってくる駅のアナウンスが鳴り響いた。
ああ、もうすぐ電車がやってきてしまう。
この女の子はこの親子の家族ではない子なんだろうか??
でも、他人の子にしても、あまりに無関心すぎる。
すると、急に女の子が母親の横に並んで立ち止まり、こちら側に向いた。
そして、やってくる電車。お兄ちゃんは電車がきたことに喜んでいる様子だ。
先頭車両が家族を隠す瞬間、女の子の顔をちゃんと確認することができた。
気づかなかったのだが、こちらにも目的の電車がやってきた様子だった。
電車と電車が入れ違いで入ってきたので、もう家族を確認することはできなかった。
自分も電車に乗りながら、なぜか気になったあの家族についてもう一度、思い出してみた。
最後にこの目に見たあの女の子にも僕は違和感を感じていた。それがなぜか電車に座りながら考えてみたのだ。
そしたら、その違和感の居所に気づいた。
その女の子。
黒目が異様に大きかったのだ。